これが俺の体験


それから数分後、
兄貴が帰ってきた。


「ただい……」


兄貴が母親を見る。
その顔は青ざめていた。


「おいオカァ!?」


兄貴が母親を抱き起こす。


「裕二……良かった」


母は安心したのか、
意識を失う。

兄貴は何度も揺する。

そして――

「お前か…」


兄貴の怒りが俺に向く。

兄貴はズカズカ音を立て、
俺の襟首を掴みかかった。


「なにしたんだッッッ!!!!?」

兄貴は黙る俺を蹴り、
母親と同じように
俺を柱に叩きつけた。


「うぐ……」

ズルズルと崩れ落ち、
俺は全身を痛めた。

いてぇ……


「言えよ」

崩れ落ちた俺を、
兄貴は無理持ち上げる。

更に暴行。

テーブルにぶつかり、
ガラス戸にぶつかり
まだまだ止まらない。


薄れそうな意識の中、
俺はこれでいい、
と思っていた。


俺はいらない。
それなら殺されても仕方ないと――……
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