ー親愛―
こんな風になってくると 身の危険を感じるよりも 半分おかしく、半分怒りに変わってくる
“もう!”
根負けした私は 車が2・3台止まれる空き地に入った
やっぱり 同じように入って来る
私はギアをパーキングにして ドアを開けバタンと力強く閉めた
“一体、何なんですか?!”
普段何事にも冷静な この私が こんなにも腹を立ててるのに
“いやぁ~。ごめんね。気を悪くさせて。そんなつもりは、なかったんだけど。”
そんなつもり…ってどんなつもりよ!
私はひとり心の中で呟いた
“で、何か用ですか?”
腹が立つのにもかかわらず 至って冷静な私
“君…面白いね。良い人材になりそうだよ”
は? 何言ってるの?
“ごめんごめん…それじゃあ。”
そう言って 助手席の窓を閉め 車をゆっくり後ろに走らせる
そして 今度は運転席の窓を開け
“自分の背中のラクガキの事は 誰にも言わんといて…なっ”
顔は笑ってるのに 瞳が笑っていない
じゃあ とでも言うように右手を軽く上げて 私の顔も見ずに勢いよく車を走らせる
一体 …何?
私は 刺青男の車を見えなくなるまで見送った
一気にどっと 疲れが押し寄せてくる
これが 私と刺青男の出会いだった