ー親愛―
秋の夕陽に照らされたその身体は 何とも言えないぐらい素敵で 少し髪の毛が薄くなった頭も 感じさせない
その上に増して あの背中のキリストの刺青
私は 見とれていた
近付きたい
私が これほどにも男に興味を持ったのは 何年ぶりだろう
たぶん 高1の時に好きになった3年生の生徒会長ぶり…かも。
それぐらい 私は第一印象から、その人に興味を持った
もっと もっと …
もっと
見たい
ガチャ “お疲れ様で~す”
玄関から誰かが出て来るのに、刺青男は気付く
それと同時に 私の存在もバレてしまう
急いでTシャツを着る
そして 私に向かってニコッと笑って人差し指を口の前に持っていき 私に《黙っとけよ》という素振りをする
私は その身体とその笑顔のギャップに戸惑いながらも 首を大きく縦に振った
何事もなかったかのように 目を合わさず車へと急ぎ足で向う
さっきまでの だるくて重い足が嘘みたいに 軽快に歩く
歩きながらカバンの中から鍵を探す
…こんな時に限って 見つからない
早く この場から去りたい
どんなにカバンの中を探しても見つからないし 右手に持っていた携帯は落とすし
…なに やってるんだろ
焦れば焦るほど 私の行動はおかしくなる
“鍵なら、右のケツのポケットじゃない?”
慌てる私に 刺青男は優しく言う
右のポケット
!! あった
早く この場から去らなきゃ…
急いで鍵で 車のロックを解除する