ー親愛―




“香坂さん。行くっしょ?…新人歓迎会”



仕事の休憩時間 コーヒーを飲む私の隣りに パンと牛乳を持って三上さんがやって来た




“えっ?”




何の事か分からなかった




会社に来て 自分の仕事をこなすだけで精一杯だった




“事務所のトコに書いてあったでしょ?新人歓迎会の事”




そういえば 張り紙がしてあった気もする




“行くでしょ?”




“…あぁ。…はぃ…”




“どうしたの?最近…元気ないみたいだけど。メシもろくに食べてないでしょ?食べる物食べないと、身体壊すよ。…とりあえず行くようにしとくから、さっ。”




三上さんは背負っていた黒のリュックから パンをひとつ取り出して




“食わなきゃ。”




と、一言残して 立ち去った






人の優しさが身に染みた だけど、かえってそれが重かったりもした









その日の帰り 事務所に寄ると、新人歓迎会の張り紙の出席の欄に 私の名前が書き出されてあった





新人歓迎会か…




今の私には どうでも良かった




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