ー親愛―
“頭イタイ… 気持ちわるぃ”
吐き出すように “お母さん、水ちょうだい”と叫ぶと 隣りから“ふん”とペットボトルを手渡された
俯せのまま 水を飲み干し 開かない目をあけると、見た事もないパネルがあって 目の前にいる鏡の中の自分と目が合う
?!!!!
うわっ! ここって…まさか…
Loveホテルって言われる所?
素っ裸の私
隣りにはどうにかシャツ一枚着ている男の人
私に背を向けて寝ている男の人の顔を 恐る恐る見てみる
えっ?……多田…主任?
なんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんでなんで?
そろっと多田主任を起こさないように 布団から出て 服を着る
“おはよう”
後ろから低い声
その低い声に多田主任が起きた事を察して 履こうとしていたズボンが上手く履けずに よろめいて尻もちを着く
“だ、大丈夫か?”
差し出された手を無視して ひとりで起き上がる
“怒ってるの?……言っとくけど、何にもしてないからな”
布団から起き出す多田主任の背中
真白のTシャツには うっすらと刺青が写し出される
私は あの刺青を前にすると 魂を吸い取られたみたいに 放心状態になってしまう