ー親愛―




バサッと着ていたシャツを脱ぐ




“あんたの左手…泣いてるで…”




とっさに左手を見ると巻いていたはずの包帯が取れていて “しんじ”の名前が浮き彫りになっていた




多田主任の刺青を見ながら おもわず赤面する




“…あんたの好きなヤツは三上じゃなかったのか?…”




その辺にあったタオルを持ち バスルームへと向かう




“ち、違う!”




“たぶん…三上はあんたの事……好きやど”



そう残してバスルームに入る




えっ?…どういう……事?



何秒かしてシャワーが流れる音がする




私は脱ぎ捨てられた多田主任のシャツを拾い 抱き締める





部屋にはただ 石鹸の香りとシャワーの音が虚しく漂う




私は





私は どうしてイイのか分からず




ただ呆然としていた

< 85 / 166 >

この作品をシェア

pagetop