キンモクセイ
知らないおばさんに
「花をくれ」だなんて
自分でも信じられなかったけれど
それだけ僕は必死だったんだな。

明らかに買い物帰りと思われるそのおばさんは、一瞬 優しい表情(かお)になって

「金木犀が好きなの?
いいわよ。
このお天気だと長持ちしそうにないし。
好きなだけ持って行きなさい」

そう言うと、家の中から
植え木用の鋏を持って来てくれた。

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