ハントウメイ
「だけど、さっきは無表情って言ったじゃん。」
「うん、言った。だけどそれはついさっきまでの事。今は違う。」
「わかんない。そんなすぐ普通解んないよ。」
「そっか?じゃぁ俺は普通じゃないからかな」
彼はまた笑ってそう私に言った
何言ってんの、蓮。
私にはちょっとよくわかんないや。
だけど何か嬉しいよ。
「……ありがとう。」
聞こえないくらの声でそうはいてみた。
「…うん」
…え?
聞こえた?
そう彼の返事らしき声が聞こえた瞬間、廊下の方が騒がしくなりだした。
入学式、終わったんだ。
「終わったみたいだね。」
教室の方を向いた私に彼はそう言った。
「うん。」
「戻らなきゃね」
「…うん。」
「玲はE組?」
頷く。
「戻った方がいんじゃない?」
「って、蓮は?」
そうだよ蓮だって。
「俺、実は朝からここに居てさ。気付いたらちゃっかり寝てて、気付いたら出席も終わってたみたいでさ、ははっ」
「だからもう戻っても意味ない。」
…そんな。
「そっか、…じゃぁ私は戻るね。」
「うん。」
「じゃぁね。」
そう言った私に彼は軽く手をあげて微笑んだ。