ハントウメイ
少しの間、男と見つめ合っていた。
気がつくと教室や廊下はさっきのがまるで嘘のように静かになっていた。
男も気付いたようで教室を覗き、人がいないのを確認すると立ち上がった。
私は視線で追い掛ける。
ちょうど私で胸ぐらいの位置まであるベランダの塀に男は前のめりになり肘をつきながら外を眺めだした。
私も真似て男と同じように外をながめた。
お互いがお互いの存在を感じていながらも、何も話さない。
だけど凄く居心地がよくて、入学式なんてどうでよくて
ただこの空間に少しでも居たかった。
私はゆっくりまた男のほうに顔をむけた。
男の横顔が目にはいる。
何でかな、反らせない。