ばうんてぃ☆はうんど・vol.3~ほーんてっどほすぴたる《改訂版》
 白状すれば完全適当だ。
「あまり大声で騒ぐな」
 前を歩くディルクに注意される。
「何者が潜んでいるかわからんのだ。周囲への警戒を怠るな。集中しろ」
「あ、ああ……。そそそうだな……」
「叱られてるしー。ちょーダッサ。ありえんてぃー」
「あかり、お前もだ」
「てか、こんな埃っぽいとこさっさと出たいんですけどー。あたしの大事なリナ○ーコスが汚れるし」
 全然聞いていない。ディルクはため息を一つつき、頭を振る。
 参考までに。今日のコスプレは、下はミニスカートに上は真黒なジャケットのような制服っぽい感じ。なにやら、宗教的な雰囲気をかもし出してやがる。胸には、よくわからんが、トゲトゲの丸い紋章のワッペン。いつも通り、腰には忠吉を差している。……ベタベタにデコられて、元の面影は微塵も感じられねえが……
 今日の俺たちは故あって、ベガスのダウンタウンの端にある閉鎖された病院を探索している。事情はあとで話すとして、理由はもちろん金になるからだ。
 夜の病院ってのは、ただでさえ薄気味悪い。ましてや閉鎖されてるとなると、もはや薄気味悪いを通り越して怖すぎる。
 いや、あれだぞ。『怖い』ってのは、あくまで一般論だ。俺は別に怖かねえぞ。こんなもん、シールズ時代にやってきたテロ屋との戦いに比べれば、なんてことねえ。テロ屋相手だと、下手すりゃ死ぬからな。
 それに比べて、ここは病院だ。病院は身体を治すとこだ。だから『死』とは一番ほど遠い場所だ。うん。
 ああ、わかってる。無茶な理屈だってことは、十分わかってるさ!
「だいたいよー。もう夏も終わりだってのに、なんでこんなキモダメシみたいなことしなきゃなんねえんだ?」
「キモダメシとはなんだ?」
 ディルクが後ろを振り返らずに聞いてくる。
「キモダメシってのは、あー……あれだ。なんつーか、心霊スポット的なとこに行って無事に戻ってくる、サバイバル戦のトレーニング的な、そういうもんだ」
「なるほど。そうなのか」
「なんかビミョーに違くね……?」
「そっか……?」
「しかし、心霊スポットというものが僕にはよくわからん。この病院がそうなのか?」
「明らかにそうだろ!」
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