ばうんてぃ☆はうんど・vol.3~ほーんてっどほすぴたる《改訂版》
「俺にもモヒートを」
「かしこまりました」
 すぐに4杯のカクテルが運ばれてきた。
「では、乾杯といこう。世代を越えた、今宵の出会いに」
 ストークスじいさんの提案に、
『乾杯』
 全員でグラスを掲げた。
――それから数ゲーム行い――
「今夜はそろそろ終いにするかの」
 ストークスじいさんが伸びをしながら、そう言った。
 俺もストークスじいさんも何度か勝ったが、ここまで結局負け越している。
「なんじゃ、もう終わりか? まだ時間も早いぞ?」
「あまり使いすぎると、ワイフに殺されるんじゃよ。うちのワイフはデルタ・フォースより怖い」
 またもや全員爆笑。
「そうか、なら仕方ないの。お前さんはどうする? ミスタ・ファング」
 トリビアーニじいさんの問いかけに、
「そうだな……。じゃあ最後に、あんたとサシで勝負させてもらおうか、ミスタ・トリビアーニ」
「うむ、そうこなくては」
 ディーラーが10枚のカードを配る。俺は後ろのディルクに目配せした。ディルクも軽くうなずく。
 カードを確認していたトリビアーニじいさんに、
「ミスタ・トリビアーニ。最後の勝負だ。いっそのこと、全額賭けないか?」
「全額じゃと?」
 俺の言葉に、ディルク以外の全員が俺に注目する。
「ああ。俺が勝ったら、今夜あんたが稼いだ分を全てもらう」
 トリビアーニじいさんは一瞬考えるそぶりを見せ、
「わしが勝ったら? 今夜わしが稼いだ分と同じだけ、お前さんは賭けられるのかな?」
「俺は残りの手持ちの金200,000ドルと――こいつを賭ける」
 言って、テーブルの真ん中にキーを放る。
「――なんのキーじゃ?」
「俺のクルーザーだ」
「現物を賭けるのか?」
「ダメか? 中古だが、2,500,000ドルはするぜ?」
 じいさん、少し考えてから、
「その船にホントに2,500,000の価値があるかどうか、どうやって証明する?」
「そこは俺を信用してもらうしかねえな」
「現物を見もしないでか?」
「ああ。けど、結構有名な船だからな。あんたなら名前くらい知ってんじゃねえか? バラクーダ号って」
 バラクーダ。その名を聞いた途端、明らかにトリビアーニの表情に動揺の色が浮かんだのがわかった。
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