ばうんてぃ☆はうんど・vol.3~ほーんてっどほすぴたる《改訂版》
「どうだ? 聞いたことねえか?」
「い、いや、知らんな。聞いたことない……」
「そうか。やっぱダメか」
 キーに手を伸ばそうとすると、
「ま、待て」
 トリビアーニが制止する。
「ん?」
「良いじゃろう。その勝負乗った」
「お、そうか? そりゃ助かる」
「申し訳ありませんが」
 ディーラーが割って入る。
「当カジノでは、現物を賭ける行為は、ご遠慮させていただいております」
「別に構わんじゃろ」
「ですが、決まりですので……」
「当事者のわしが、良いと言っておるんじゃ!」
 トリビアーニが声を荒らげる。明らかに冷静さを欠いてる証拠だ。
「しかし――」
「まあまあ」
 そこへストークスじいさんが割って入った。
「面白そうじゃないか。現物賭けがダメじゃと言うなら、わしが2,500,000出そうじゃないか。それで問題ないじゃろ?」
「え、ええ、まあ……」
「ミスタ・トリビアーニがクルーザーを手に入れたら、あとでわしに金を返してくれれば良い。それで良いかな?」
「あ、ああ、それで構わん……」
 トリビアーニも納得したようだ。
「ならそういうことで。ミスタ・ストークス、感謝するぜ」
「いやなに」
 俺はストークスじいさんに礼を言って、バラクーダのキーをポケットに戻した。
 トリビアーニは左手の親指で顎をこすりながら、戦略を練っている。やがてククっと笑い、
「お若いの。ドロップしても良いんじゃぞ?」
「いや、おりねえよ。この勝負、もらった」
「わしにブラフは通じんぞ。今夜のお前さんを見ていて、クセは完全につかんだ」
「そうだよな。あんたほどになりゃ、相手のクセを掴むくらい楽勝だよな」
「……」
 黙っちまいやがった。
「では1度目のベットを」
 トリビアーニは手持ちのチップを全て賭けた。俺も、別に用意しておいた200,000ドル分のチップをテーブルに乗せ、その横にストークスじいさんが2,500,000ドル分のチップを乗せた。
 トリビアーニはにやりと笑い、
「ノーチェンジ。悪いが、チップもクルーザーもいただきじゃ」
「さて、どうかな。俺は3枚」
 それを見てトリビアーニは、またもククっと笑う。3枚換えたってことは、ワンペアしかできてねえ可能性が高いからだ。
「2回目のベットは――よろしいですね?」
「ああ、いらん」
「やってくれ」
「では、オープンしてください」
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