ばうんてぃ☆はうんど・vol.3~ほーんてっどほすぴたる《改訂版》
 その場の全員が、固唾を飲んで見守る。ただストークスじいさんだけは、緊張というより、クリスマスプレゼントの包みを開ける子供のような目で見ていた。
「7のフォーカード! わしの勝ちじゃ!」
 おお、とストークスじいさんの声。フォーカードは2番目に強い手だ。だが――
「誰の勝ちだって?」
「なに?」
「よく見ろよ。俺のカード」
「ん……? なっ……!」
 スートは全てハート。数字は、8からクイーンまで連続している。
「す、ストレートフラッシュ……。ファング様の勝利です……」
 ディーラーが俺の勝ちを宣言した。
「惜しいとこで、ロイヤルフラッシュにはならなかったけどな。ハートのクイーンを引いた勝負で、負けたことねえんだ、俺」
 言って、ハートのクイーンを掲げてみせる。
「くっ……!」
「あんたさっき、左手の親指で顎をこすってたろ。あれ、そこのディーラーにイカサマやらせるときの合図だろ?」
 俺は顎でくいっとディーラーを指し示す。
「なっ……!」
 トリビアーニの動揺の色が濃くなる。と同時にディーラーも焦りだした。ストークスじいさんは二人に注目する。
「あんた人のクセを見抜くのは得意なようだが、自分のジェスチャーには無頓着だったみてえだな。
 さてミスタ・トリビアーニ。いや、国際賭博詐欺師、ラウロ・カッティーニ。俺達が何者なのか、もうわかってんだろ?」
 イスから立ち上がり、ゆっくりとカッティーニへと近づく。ディルクはいつの間にかディーラーの後ろに回り、後ろ手に手錠をかけた。ディーラーは観念したようで、抵抗はしなかった。
「変わったラストネームだとは思っとったが……あの”ブラッディ・ファング”か! くそっ!」
 カッティーニはイスを蹴倒し、一目散に出口へと走る。
「そこをどけ!」
 状況が飲み込めず、おろおろしていたドアマンを突き飛ばし、ドアを開け外へ飛び出すと――
「てか、ちょー時間かかりすぎー! 立ちっぱで2時間待ちとか、マジありえんてぃー!」
「へっ……?」
 
ごきんっ!
 
 待たされてイライラしてたあかりが、スチール製の鞘を後頭部に叩きこむ。カッティーニはそのまま、その場にうつ伏せにぶっ倒れた。
「……少しまずいトコに入ったのではないか……?」
 ディルクがカッティーニを覗き込みながら、変な心配をする。
「大丈夫だろ。意識あるし。おい、じじい」
「う……むぐ……」
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