ばうんてぃ☆はうんど・vol.3~ほーんてっどほすぴたる《改訂版》
「知らね。行ったことないもん。だから行ってみたいの。向かいにピンクス・ホットドッグあるし」
「目的はホットドッグか……。L.A.にいた頃はたまに食いに行ってたけどな」
 創業80年以上をほこる、老舗のホットドッグ屋だ。L.A.に住んでるやつで知らねえやつはいねえ。
「有名なんでしょ? ちょー食ってみたいんですけど。ガチで」
「別に特に変わったホットドッグでもねえぞ?」
「良いの。食べてみたいんだから。いいっしょ? それ作るの、超絶クソムズだったんだから」
 俺の左手首の腕時計を指差し言う。
 この腕時計は、バックルの部分でカードをなぞるとカードのプリントを変えられるっつー、あかり特製『イカサマツール』だ。これを作るために、ホテルのお土産コーナーでカジノで使われてるのと同じカードを何組も購入し、プリントのインクやら何やら色々調べまくった。スキャナとレーザープリンタがどうとか色々言ってたが……正直理解できなかった。けどまあこんなもんでもなきゃ、ディーラーを味方につけてるプロのイカサマ師に勝つのは不可能だった。
「わかったわかった。じゃあプラネット・ハリウッドな」
「ありがとうパパ大好きガチで」
「誰がパパだ」
 またしても棒読みだ。
「ジル。僕はヴェネティアンの方が――」
「お、この部屋だな」
 VIPエリアの一番奥。とある部屋の前。俺たちはこの部屋の主に呼ばれたのだ。
「ん? 今なんか言ったか?」
「いや、なんでもない」
「そっか」
 チャイムを押す。すぐにドアが開き、バトラーらしき男が姿を見せた。
「ジル・ファングと愉快な仲間たちだ。ミスタ・ストークスに呼ばれた」
『愉快な仲間たち……?』
 後ろの二人の呟きは、聞こえなかったことにする。
「うかがっております。どうぞ中へ」
「サンキュー」
 そう。俺達を呼んだのはストークスじいさん。カッティーニ達をICPOに運ぶ前に、ホテルの名前と部屋番号が書かれた名刺を渡され『用が済んだら部屋まで来てくれ』と言われたのだ。
「おお、来てくれたか。わざわざ呼び出してすまんかったな。ささ、好きなとこへかけてくれ」
「んじゃ、失礼するぜ」
 ストークスじいさんは、ソファに腰掛けて1杯やっていた。俺たちはうながされるまま、じいさんの向かいのソファに座る。
 さすがVIPクラスのスイート。しかもベラージオ。ハンパねえ豪華な造りだ。入口入ってすぐの床は大理石だし、調度品もいちいち金がかかってる。こんな部屋、テレビでしかお目にかかったことはねえ。
「改めて、お会いできて光栄じゃよ。ジル・ファング君にディルク・フューラー君。そしてお嬢ちゃんは……えーっと……エクソシストかなにかかな……?」
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