ばうんてぃ☆はうんど・vol.3~ほーんてっどほすぴたる《改訂版》
 時計を見る。きっかり深夜の0200時だ。
「そ、そうだな。確かにこんなチンケな仕事、3人でやるこたあねえよな、うん。ディルク先生一人で十分だ」
「そそそーだよねー。ディルク強いもんねー。だいたいこんな夜中に、あたしみたいな可愛すぎるJKがウロウロしてちゃダメだしー」
「そうそう。じゃ、そういうことで、俺たちはこの辺で――」
「その代わり、報酬は僕一人がもらうぞ」
 出口へ向きかけた俺たちの足を、その一言が止めた。
「……なに……?」
「よく聞こえなかったんだけどー……」
「だから。僕一人でやるならば、当然報酬は僕一人の総取りだろう?」
 ちなみに報酬は、日本円で約1,000万だ。
 俺とあかりは前へ向き直り、
「――帰るなんて一言も言ってねえぞ」
「あたしも」
「そうか。ならばこのまま進もう」
 言ってディルクは、ライトを取り付けたH&K MP7を腰だめに構え、再び廊下を歩き出した。
 今日はPSG-1はホテルに置いてきている。建物内のドンパチには不向きだからだ。
 俺もライト付きのM4を同じように構え、ディルクの後ろにつく。あかりは俺の後ろから、マグライトを左手に逆手に構えてついてくる。
「しかし妙だな」
「なにがだよ?」
 しばらく進んだところで、ディルクが疑問を口にする。
「入口から入ってもうここは3階なのに、チンピラ連中が一人も見当たらない」
「そういやそうだな」
 チンピラどころか、猫の子1匹見当たらねえ。
「なにやら人の気配はするのだが……」
「ひあっ!!」
 突然、あかりがおかしな声を上げた。
「な、なんだよ! 脅かすんじゃねえよ!」
「あ……あ……今……ま、窓……」
「ああ? 窓がどうしたって?」
 窓を指さして、ぶるぶる震えていやがる。顔色が青白く見えるのは、ライトのせいか実際そうなのか。
「窓……窓の外に、白い布みたいな人影が……!」
「ばばバカ言ってんじゃねえよ! そんなん、どこにもいねえじゃねえか! おおお前あれだろ! また俺を脅かそうとして、んなこと――」
「ホントにガチでいたんだって!! 今窓の外、ひゅーって白いシーツみたいなのまとった人影が――」
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