ばうんてぃ☆はうんど・vol.3~ほーんてっどほすぴたる《改訂版》
 言った瞬間、マジで通った。白いシーツみたいなのをまとった、髪の長い人間が。髪が顔にかかって表情も性別もわからなかったが、ひゅーって通ってった。ひゅーって。
「あ……あ……!」
「きゃ――――!!!」
 あかりが叫んで走り出した。しかも出口とは反対方向へ。廊下をとんでもないスピードで奥へと走っていく。これがジャパニーズで言うところの『カジバノバカヂカラ』とかいうやつか。
「お、おい、待てあかり!! 俺を置いて――じゃねえ! 一人で走り回るな!」
 慌てて後を追う。ディルクもついてきた。
「あまり大声を出すな。ギャングどもにこちらの位置を知られるぞ。それにゴーストが寄ってくる」
「今この状況でよくそんなこと言えるな、お前!」
 この相棒は時々空気が読めねえ。
「あかり! おい! とりあえず止まれ!」
「いや――――!!!」
 叫びながら、どこかの部屋へ飛び込んだ。俺も追って中へ入る。入ってすぐのところであかりの腕を掴み、取り押さえた。
 はずみでドアが閉まった音が後ろから聞こえた。
「いや――――!! いや――――!!」
 我を忘れて暴れまくる。
「おい、落ち着けってのに! こら! 暴れんな! いてっ!」
 振り回すあかりの手の甲が、頬にヒットした。
「だって! 白いの! 布みたいな! 外に! 髪が長いのー!!」
「わけわかんねえよ! とにかく落ち着け!」
「う……ひっぐ……うう……」
 やっと落ち着いてきた。
「だって……ジルも見たぢゃん? あの白いの……」
 泣きながら訴えてくる。いつも以上に幼く見える。
「ああ、見たけどよ。ゴーストって決まったわけじゃねえだろ? てか冷静に考えてみりゃ、ここはギャングのたまり場なんだ。俺たち以外にも人がいるはずなんだ。そいつらが俺らを追い返すために、トリック仕込んでるだけかもしれねえ」
「うぐ……そぉかもしれないけどぉ……」
 そう。この病院の不気味さにすっかりのまれちまってたが、よくよく考えてみりゃ、ここにはギャングどもが大勢いるはずなんだ。ゴーストより、まずそっちに出会う可能性の方が高い。てか、出会えなきゃ仕事にならねえんだが。
「とにかくこの部屋から出るぞ。ディルクが待ってる」
「う……うい。そぉだよね……」
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