空色
「…何しに来たの?」
マリカが息のあらい彼に向かって冷たく言う。
「ひかりちゃん、ホントごめんっ!あいつ、ちょっと酔ってるのもあってさ、許してよ?ね、マリカもさ、いてくんないと困んだけど。」
ヘラって笑う彼に、マリカはニッコリ笑ってエレベーターの閉まるのボタンを押す。
彼が閉まる扉に少し体を後ろにそらしたすきに、エレベーターの扉は閉まり、下へと降りていく。
「彼、よかったの?」
「あぁいいよ、あいつのコトはほっとけば。あんな失礼な友達連れてきたんだから、あとは自分で対処しろっつーの。なんかごめんね、ひかりちゃんには無理やり付き合ってもらったのに…」
「あたしは別にいいけど。」
なんだか彼が少し気の毒だと思ったことは、言わないでおこう。
「で、今からカラオケ行く?」
マリカが今日一番の笑顔であたしに微笑む。
可愛いなぁ。
ホント世の中って不公平だ。
でもあたしは、今この薄暗いエレベーターの中でさえ、見えてるコトが幸せなんだ。
こうしてマリカの顔が見えてるだけで。
ガラス張りの窓から見えるネオンの光も。
「うん♪」