空色
“大丈夫よ、こちらこそごめんなさい。あたしがぼーっとしてたから。”
彼女はにっこり微笑んで、その場を去って行った。
あたし達も先に進もうとした時、あたしは落ちているIDが目にはいった。
きっと彼女が転びそうになって体勢を崩した時に落としたんであろう。
そのIDにはさっき見た彼女の顔写真が載っていた。
急いで振り返って見たけど、もう彼女の姿はなく、あたしは辺りを見回した。
“落とし物?さっきの人の?リズっていうんだ。”
ライアンが後ろからあたしの拾ったIDを見る。
“どーしよう?”
あたしはライアンを見る。
“うーん、住所書いてあるし、ここにとりあえず送っとく?それか、このアドレスロンドン市内だし、明日とか届けに行く?”
“そうだね、すぐ渡した方がいいと思うから、明日届けに行こう。”
何故だか分からないけど、直接届けなきゃって思った。
もしかしたらそれは、さっきの彼女の印象が、とてもいい人だったからなのかもしれない。
運命の糸が、複雑に絡まりあって、神様はどこまで意地悪なんだろうか。
この時のあたしは、知るわけもなかった。