空色


“モーガン、1ヶ月後だから。今日店長に言っとけよ。”

“分かってる。じゃ、行ってきます。”

狭いアパートの入り口で、ライアンに軽いキスをして、あたしはドアを開けた。

高校を卒業してから、あたしは大学には行かず、バンドの練習の為定職にもついていない。

バンドでプロ目指そうって決めた時から就職なんてする気はさらさらなかった。

あたしには歌しかないから。

何をやっても不器用で、この世で普通に生きていくってやつが、あたしには出来ない。

でも生きてく為には、こんな売れないアマチュアバンドだけじゃ食ってけるわけもなくて。

昔からよく通っていたコーヒーショップでバイトしてるってわけ。

店長とも仲良くしてたから、簡単に雇ってもらえた。

給料は最低賃金だけど、自由がきく仕事。

店長もあたしの夢を応援してくれてるから。

金曜の夜はコーヒーショップで歌も歌わせてもらってる。


そんなバイト先だから、長期の休みを申請するんだけど、きっと店長も喜んでくれると思うと、むしろ言いたくてしょうがなかった。


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