空色


パパが慌ててあたしのもとに駆け寄る。

スーツ姿にネクタイが走ってきたせいか、少し歪んでいる。

「そうか、見えるのか?」

あたしに問いかける優しい笑顔に、小さく頷く。

見える世界は、光がやけに眩しくて、慣れない。

ぼんやりと焦点も合わない感じだが、見えているのは分かる。

「あたし、いつ退院出来るのかな?」

「そうね、まだ一週間ぐらいはかかると思うけど。あぁ、先生呼ばなきゃっ!」

ママが思い出したように、ベッド脇にあるナースコールのようなボタンを押す。

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