空色
ライブは最高だ。
このステージに立つ瞬間はいつも興奮する。
どんなセックスや薬よりも気持ちいい。
ステージで準備にとりかかるメンバーとともに、あたしはマイクの立っているステージ中央へと向かう。
客の歓声があがる。
暗くてよく見えないけど、ほぼアジア人でうめつくされたフロアは、なんだか違う世界にでもやって来た気分だ。
“準備はいい?”
あたしが叫ぶと、歓声があがる。
言葉なんか通じなくたって、ノリで返ってくるのが分かる。
トニーのドラムスティックが、開始の合図をする。
音が響きわたると共に、ステージ上の照明だけがパッと明るくなった。