空色


ステージ上から見下ろす観客は、すごく盛り上がっていた。

あたし達の曲は知らないはずなのに、ノッてくれてる。

さっきの彼はまだ彼女を後ろから支えていた。

きっとカップルなんだろう。

なんだか羨ましかった。

ライアンもきっと同じことしてくれると思うけど、そこにあたしの気持ちがなきゃ意味ないんだ。

わかってはいるけど、突き放せる程あたしは強くない。

時がたてばたつほど、引き返せなくなる。

“オイ、モーガンっ!また音走ってる”

いつの間にかショージが前に出てきてて、客に気づかれないようパフォーマンスしながらあたしに小声で囁いた。

現実に引き戻される。

歌うことに集中しなきゃ。


そこからあたしは、無心で歌ってた。


やっぱライブは辞められない。



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