とりあえず、


「ダメ、ンズて、チャラいってこと?」
「ちゃうちゃう。あいつ一人やったらなぁんも出来ひん。」

かしゃん。
屋上のフェンスに体を委ねて空を見た。
一週間前に学校が始まってから
随分空が高くなった気がする。

「そうなん?」

かしゃん。
マリちゃんも、空を見た。

「せやで!今度あいつん家行ってみ。」

絶望すんであの汚さ。
ふぅん、と素っ気ない返事とともに
さらりと風が吹き抜けた。

「メアドとか、教えてもらえるかなぁ。」

独り言のような、
か細いマリちゃんの声が聞こえた。

「教えてくれるんちゃう?」

知らんけど。
関西人特有の「知らんけど」。
知らんもんは、知らん。

「やんなぁ…。」

今までタクのこと好きやて
言う子は何人もおったけど、
この子はちゃう。
また面倒なことになってしもたなぁ、
なんて思いながら、
高くなった空を
もう一度見上げた。
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