Sweet Love
「ん?あーゆかちん!!ばいばい。夏休み食い過ぎんなよ!!」
「あ、うん、はは。食い過ぎない。ばいばい……」
やっぱり、聞けない。私の意気地なし!!もう、メルアドは諦めよう。
廊下を歩き出した亮は、突如くるっと振り返った。
「あ、そーだゆかちん!!」
「へ?」
ごそごそと鞄の中に手を入れて、携帯を取り出す亮。
「携番、教えてよ!!」
はい。そりゃもう喜んで!!
そうして、私達は携番を交換した。私は亮からの着信に即座に反応できるように、大好きな大塚愛の『ハニー』を指定着信音に設定した。
これで、いつでも亮と連絡とれる。もうどーんと来いや夏休み!!
――と意気揚々と突入した夏休みであったが、私は自分から亮に電話する勇気が出ず、亮からの連絡待ち状態の日々が続いていた。
8月の半ばになっても、私の携帯が『ハニー』を鳴らすことはなかった。宿題のプリントの指名欄に、高橋、とまで書いて手を止める。高橋……り、ょ、う、と三文字を付け足した。
「亮、会いたい……」
私の目から雫が落ちて、亮の字を滲ませた。