夜獣2-Paradise Lost-
「はあ、はあ、ここにいた」

「アキラ」

次の場所に移動しようとしていた時、アキラが姿を見せた。

髪が乱れているところ、走って来たのかもしれない。

「甘粕は、どうした?」

「その事で、話しがあるの」

アキラが近づいてくると瞬時に紅目になり、高速ビンタが頬を鳴らした。

「ぐ!」

避ける暇もなく、脳が揺れるほどの痛み。

「何でそんな事しか出来ないの!?」

今のダメージは身体に効くものであった。

「あいつは能力者、だから、闘うだけだ」

「能力者、甘粕さんが?」

アキラは甘粕の能力者である事を知らないのか。

大方、アキラは自分の愚痴を聞いてもらっていただけなのかもしれない。

仮に、甘粕が何かを伝えていたとしても、そこに能力者としての情報は無い。

「お前、死ぬぞ」

「何を言ってるのよ、そんなワケないでしょ」

「2秒後に高速で動け」

アキラの後ろには、甘粕が手刀を振り下ろそうとしていた。

やはり、間違いない。

甘粕は、僕達姉弟を葬り去るつもりだ。

得とか損とかではない。

甘粕が『悪』であると決めたから、消そうとしている。

僕は、白い空気を纏ったアキラの身体を押して、甘粕にぶつけた。
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