夜獣2-Paradise Lost-
アキラの身体が飛ぶと同時に、腕が弾かれる。

そのまま、転がり続けて甘粕との距離をとった。

アキラは甘粕にぶつかった事に驚いていた。

『何故、甘粕が後ろに立っていたのか』

信じられない様子だが、僕の言葉を思い出したようで、能力を使い高速で動く。

その際、甘粕の手刀は、アキラの背中を掠める。

「ぐ!」

痛みによって、足に力を入れられず転んだ。

「何で」

四つんばいになっているアキラの中では疑問は氷解していない。

しかし、結果は出た。

能力がなければ、アキラはバッサリと斬られていたに違いない。

「お前は信じる人間を間違えた。運が悪かっただけだ」

どんな場合でも、浮気する人間を信じたところで、悲惨な結果しか残らない。

今回は、最も悪い結果に出たというだけの話だ。

「ねえ、あんたの言葉がなければ、私、死んでたのかな?」

「ああ」

ゆっくりと立ち上がり、甘粕を見据えた。

「甘粕部長、私を殺す理由は、何ですか?」

「愛、故にだね」

甘粕は冷静で、声は至って平坦な物である。

「愛?」

理解が出来ず、顔を歪ませる。

「そこにいる弟君から解き放ってあげようという思いやりだよ」

「それが、殺す、理由ですか?」

「ああ、そうだね」

甘粕は、微笑んでいた。

アキラもまた、微笑む。
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