夜獣2-Paradise Lost-
「残念だよ」

甘粕が、アキラに向って走り始める。

「耕一!あんたは下がってなさい!」

高速に動こうとしたところで、電撃を受けたように失神した。

「真っ当な人間に、悔いるんだ」

振り下ろされる刃。

「目くそ鼻くそ笑う、だ」

甘粕目掛けて、石を蹴り上げる。

距離があった分、甘粕は石を真っ二つにして切り裂く。

その間に、弾かれ後方に下がった足で、背後の白い空気を蹴った。

ジェットの如く前へと進み出て、隙を与えないために距離を詰める。

甘粕はアキラから僕に標的を変え、刃を横に一閃した。

確実に斬られる。

紙一重で、突出している額に空気爆弾を発動させた。

走っている最中、壁にぶつかったように後方一回転して地面に倒れる。

甘粕は手刀で空気爆弾を斬ったようで、弾かれていない。

だから、次の動作は僕よりも速い。

刃を心臓に刺そうとする甘粕。

ぼやける視界で咄嗟に転がりながらも、脇下を刃が掠めた。

苦しむほどの痛みはない。

片膝を付きながら、敵の姿を確認する。

視界はボヤけ、はっきりとしない。

ビンタと空気爆弾の脳へのダメージは大きいらしい。

「生きるとは、何かね?」

問いかける。

「生きる事は辛い事だ。とても、とても、痛い事だ」

しかし、問いには自分自身で答えてしまった。
< 103 / 112 >

この作品をシェア

pagetop