夜獣2-Paradise Lost-
「痛かった。でも、誰も裁いてくれはしなかった」

幽鬼のように、近づいてくる。

「グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」

刹那、全身に痛みが走る。

斬られたところだけではない。

皮をはがれたような痛みが、全身に走っている。

「父さんや母さんは、君のような顔を見て憂さを晴らしていたのかなあ」

のた打ち回り、悶える。

思考が、巡らない。

「私を甚振り楽しんでいた彼らは、救いようのない屑だった」

甘粕に余裕が出来たのだろう。

僕の腹を蹴り付ける。

「ワアアアアアアアアアア、オオ、オガアアアアアアア!」

いつもの数倍、腹に激痛が走った。

痛い、痛い、痛い、痛い、痛い。

そう、脳が伝達している。

「でも、力さえあれば裁けるんだ。誰でも、どんな時にでも」

転がりまわっているところを、足で止める。

「」

声にならない。

痛みで、何もかもがショートしてなくなりそうだった。

「ある時、痛みが消えて、私に力があると気付いてね、屑を裁いたんだ」

片腕を手刀で刺した。

何故、気絶出来ないのか、わからなかった。

「でも、それは罪には問われない。何故なら」

次の一撃が、心臓を狙っている。

「価値が無いからさ」
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