夜獣2-Paradise Lost-
それが、今出来る最後の行動だった。

全身が果てない痛みを襲い、次の行動が取れない。

眼を開けたまま甘粕が、先に倒れる。

心臓をやられ、即死だったのだろう。

僕も、その場に倒れた。

倒れた時、痛みの追加はない。

甘粕が死亡した故に、能力が消え去ったか。

甘粕の能力は、斬る事だけにあらず。

斬った後、全身の防御力を極端に下げる物だったんだろう。

だから、少し触られただけでも、痛みが走る仕組みになっていた。

女児は何が起こっているのか、理解出来ていない。

それでも、恐怖は感じていた。

顔がそう告げている。

女児は僕を憎む。

僕が、『奴』を憎んでいるように。

目の前で肉親を殺されたのだから、当然の話か。

どんな理由があっても、免れないだろう。

それでも、『奴』を倒す前に邪魔をするというのなら、闘うだけだ。

感覚が、遠のいていく。

僕は死ぬのか。

『奴』を倒せずに?

憎しみはまだ消えてないのに?

嫌だ。

そんなのは、認めない。

眠くなる寸前、震える手で携帯を取り出した。

念のために持ってきておいた物だ。

しかし、渚の番号に発信させたところで、意識が飛んだ。
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