夜獣2-Paradise Lost-
小学生だった頃。

部屋の中で漫画を読む僕。

「耕一」

部屋の扉を開けて、アキラが入ってくる。

「何?」

「部屋の片付けしろって母さんから言われてたでしょ」

「後でする」

「後は無い!母さんのヒステリックで、私までとばっちり食らうの嫌なの」

アキラが漫画を取り上げて、ベッドに座る。

「私が監督しといてあげるから、早く片付ける」

そういうと、僕の漫画を読み始める。

仕方なく片付けを始める。

終わった頃には、アキラは僕のベッドの上で眠っていた。

その日、ご飯のオカズの牡蠣フライを一つくれた。





中学生だった頃。

部屋の中で、試しに腕立て伏せをしていた僕。

「耕一」

アキラがノックもせずに部屋に入ってくる。

「何?」

「今日バーゲンだから、荷物持ちでついてきて」

「彼氏は?」

アキラが、僕のフェイスにアイアンクローを決めてくる。

「彼氏はいない!友達もキャンセル!あんた暇そうだし、さっさと行くよ」

僕の服を引っ張り、強制的にデパートまで連れて行く。

数時間連れまわされたが、最後には飯を驕ってくれた。





ある時。

アキラが交通事故にあった。

猫を助けようとしたところで、車に跳ねられたようだ。

死ぬかも解らない大怪我だったらしい。

手術が難航して、助かる見込みも少なかった。

僕は泣いた。

助けて欲しいと泣き続けた。

神が願いを聞き届けたのか、アキラは綺麗な身体で退院する事となった。

この時から、アキラの歯車は狂い始めていたのかもしれない。
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