夜獣2-Paradise Lost-
僕を無理矢理目覚めさせたり出来たのも、純血の能力だ。

まだ隠れていそうだが、『純血』について追求するつもりはない。

「行くよ」

空の皿を机に残し、外出する準備を整える。

「道場ですか?」

「今まで寝てたんだし、基礎体力はつけておきたい」

アキラのように負担がかかる能力なら、今の僕では体が壊れてしまう。

だから、体を鍛え、いつでも能力を使えるようにしておかなければならない。

一度で体が壊れてしまっては乾を殺せない。

「お続けになるつもりですか?」

渚は眉を下げ、心配そうな顔をしている。

本物かと心の中で疑っているが、口には出さない。

「ああ、僕がやらなくちゃならない」

乾の死によって、自分の願いは叶う。

それで、全てが終わる。

武道をどういう風に心得ているかと問われれば、精神を鍛えるためじゃない。

武道を貶していると言われようとも、汚い手段を使ってでも強くならなければならない。

「お止めになるつもりはないんですね?」

「渚は僕に止めろというのか?」

自分は止めるつもりなどない。

心が一度死んだ時点で、常套手段を取る気はない。

「耕一さんは自分の身を壊すつもりですか?」

「自己管理は出来てるよ」

乾に会う前に自分を壊すなど、ありえない話だ。

それよりも、相手を壊す事を考えてた方が有意義だろう。

「あまり無茶はなさらずに」

「渚のおかげで僕は生を実感出来ているんだ。だから、心配しなくていい」

しかし、無茶をしなければ、普通に生きているのと変わらない。

限界を超えた先に開花があるはずだ。
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