夜獣2-Paradise Lost-
外は風が吹いていた。

強く当たる空気に過ぎず、癒しを感じることはない。

「開花はまだ先なのか」

もどかしさがある。

だが、放棄して、後ろに進む事は許されない。

僕が一歩退けば、乾は三歩進んでいることだろう。

道場は家から近く、歩いて10分程度の場所にある。

能力開花のために週5で通っている。

金の問題はないから、バイトをする必要がない。

余計な時間で歩みを止めたくないので、渚の財力を当てにさせてもらう。

道場は門下生が数十名集まっており、人気もある。

色んな師がいるが、同じ思想を持った者は独りもいない。

師は精神も研ぎ澄まされて一段上の存在であるが故、邪な心は持ち合わせてはいない。

精神面も鍛えることが武道であるのはよくわかる。

僕が必要とするのは理ではなく鋼の肉体に破壊の拳。

そこに能力を付加させて、威力の底上げをするつもりだ。

しかし、乾は頭が良い。

僕の考えを凌駕し、いとも簡単に殺しにくるだろう。

そうはさせない。

お前の喉者を食いちぎってやる。

今は高みの見物でもしていろ。

すぐにお前を見つけてやる。

風は行く道を押し戻そうとしているように感じられた。

風如きで僕は止まらない。

僕を止めるのなら、業火をも吹き飛ばす台風をもってこい。

考え事をしながら歩いていると、いつの間にか道場の前に到着していた。

今日も色々な年齢層の門下生が集い、型の練習を熱心に行っていた。
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