夜獣2-Paradise Lost-
目が覚めて、待っていない朝が来る。

起きれば、必ず体が痛みを訴える。

傍にある棚から錠剤を取り出すと、口に含んで飲み込む。

何の味もしない薬、飲まなければ僕は生きてはいけない。

薬の効果で痛みが和らいでいく。

別に死んでもいい。

誰も止めなければ夢の中で生き続けるんだ。

現世に帰ろうという気持ちはない。

何故、自殺することなく、現世に帰ってきている?

雪坂は関係ないのに、僕は帰ってきている。

「恐怖、か」

ポツリと吐いた言葉は、風に飛ばされるように消えた。

あれから三年。

ベッドの上で眠り続けたらしい。

大怪我を負い、大切なモノを失ったショックに耐えられなかったのか。

受けた傷は三年たらずでは治らない。

いや、心傷は永遠に治らないかもしれない。

自分は誰も助けることが出来ない弱者であり愚者である。

夕子のいない生活を続けることに、意味はあるのだろうか?

ベッドの上で後悔に塗りつぶされようとしていたところ、ドアが開いて制服を着た物静かな女が入って来た。
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