夜獣2-Paradise Lost-
油断はしない。

敗北すれば、乾には辿り着けない。

低い態勢から、腹を狙って力を込めた中段突きを放つ。

届くはずの突きも空を切り、数メートル先にアキラは立っていた。

アキラは身体能力を最大限まで上げて、スピードを速くする力を持っている。

「能力者が相手か」

能力の試しには打ってつけだ。

姉という血縁関係は忘れ、敵と認識していた。

「本当に耕一?」

「アキラが知ってる昔の僕じゃない」

能力者として目覚めてしまった時から、乾を殺すための修羅となった。

「夕子ちゃんが死んだ日から耕一がいなくなって、父さんや母さんがどれだけ心配したと思ってるの?」

「夕子のことは言うな」

夕子の名が出ただけで憎悪が込み上がる。

「家に帰って父さんや母さんを安心させてやりな」

「必要ない」

僕の姿を見せたところで、悲しむだけだ。

「本気で痛い目を見たほうが良さそうね」

アキラはヒールを脱いで素足になり、無抵抗にさせるために本気になる。

アキラに攻撃の意志があるならば、僕も容赦なく拳を振るえる。

「悪いが、お前を乗り越える」

「やってみな、このクソガキ」

姿を消したかと思えば、真横から拳が現れる。

体を後ろに反らして拳を避ける。

アキラのターンは終わらず、連続で上段蹴りを頭に繰り出してくる。

体を反らす限界がきて両腕でガードすると、女の蹴りと思えない重みがある。

後方へニメートル程度、地面の上を滑っていく。

攻撃力増加のために足に能力を付加させたのか。
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