夜獣2-Paradise Lost-
「アチチ、なんちゅう動体視力してんのよ」

足を摩っているところ、蹴った方もダメージはある。

僕の腕もダメージがないとは言えない。

海江田に与えられたダメージが残っている以上は長期戦には持ち込まないほうがいい。

「何で変わっちゃったのよ?」

「生きる目的が、報復だと気付いたからだ」

「はあ?報復う?何言ってるのよ?」

「理解しなくていい。今は闘いで相手を倒すだけだ」

戦いによって得るものは次なるステップ。

自分がここまで好戦的だとは誰が思っただろう。

「ふうん、夕子ちゃんの名前を出した途端、顔が険しくなったってことは、それが関係してるわけね」

下に落ちていた石を拾うと、軽くニ、三回上へと投げる。

「帰るつもりがないっていうのなら、悪いけど力ずくで連れて帰るわよ」

掌に落ちた瞬間、石は姿を消した。

「な、ゴ、オ!」

僕の口から唾液が飛び散る。

腹に痛みが走り、石が埋もれるようにめり込んでいた。

「グ」

ゆっくりと石は落ちるが、痛みが引かない。

「痛い思いをしたくなければ、心配させた母さんや父さんの前で謝りなさい。あんたの義務よ」

「家には求める物がない」

能力者相手だと力の差が歴然としている。

腕に能力付加し、投げるスピードを速くしたんだろう。

容赦のない姿勢が、僕を強くしてくれる。

乾は人を殺す能力を身に着けている。

これでは、足りない。

「遠慮せずにもっと怒れ。もっと投げろ。憎悪が身を包むぐらい、極限まで追い込んでみろ」

「耕一、ちょっと気持ち悪いよ」

「何もかも、捨てたんだ」
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