夜獣2-Paradise Lost-
あの攻撃を見切ることが出来るか?

僕が強くなるための修行なら、やらなくてはならない。

アキラを乗り越えて、一歩進まなければならないんだ。

「アキラ、僕の糧になってもらうぞ」

眉間に皺を寄せたアキラの顔。

怒りに満ち満ちている。

「家に帰る前に病院ね」

いきなり足に違和感が走る。

「グア!」

左足の脛に石がめり込んでいる。

ヒビが入っているか、折れているかもしれない。

だが、まだ右足が残っている。

「足から潰してあげる」

痛みがなければ進化はない。

犠牲のない進化はお遊びに過ぎない。

今、アキラはミスを犯してしまった。

一つは足を狙うと断言してしまったこと。

もう一つは、僕が能力者だと気付いていないこと。

持っていた石が消えた瞬間、狙われた無傷の右足を振り上げる。

危機的状況になると無意識に紅目へと変化するようで、目に見える足元の白い空気を蹴っていた。

石は一直線に前へと飛んでき、右足は後方にはじかれ前のめりに倒れこむ。

「ぐあ!」

自分の体重を、大怪我の負った左足で支えたことにより激痛が襲う。

痛みに耐え切れず、僕はのた打ち回った。

顔を歪ませながらも、石の行方を確かめるためにアキラを見る。

アキラは無傷で、石は通過していったのだろう。

「何?」

いや、アキラの頬には傷が付いているようだ。

「あんた、目覚めたの?」

「だからこそ、報復すると決めた」

傷だらけというのに、対抗意識は燃え上がるばかりだ。
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