夜獣2-Paradise Lost-
「何を考えてるか知らないけど、これ以上は無茶しないでよ」

油断しているのか、近づいてくる。

僕の真横まで来ると中腰で状態を見る。

「あんたさ、報復なんて止めなよ」

「僕の生きる目的を、否定するな」

僕は空いていたアキラの左腕を掴んで背を起こす。

「近づくなと言ったはずだ」

拳を打つ前にアキラの右拳が腹にめり込んでいる。

「ゴエ」

「私も、病院送りにするって言ったわよね?」

強烈な一撃で、沈んでもおかしくない。

気を失いかけて、今の状態では力が入りそうにない。

だが、これでも足りない。

腹痛に襲われていても、足が立たなくても、諦められない。

「まだ、やる気?」

「卑怯と言われても、愚鈍と言われても、お前は越えなくてはならない壁なんだ」

僕は、寝そべりながら肘を立てている。

スイッチを押すように、肘で地面を叩く。

僕は、肘の部分に白い空気が在る事を知っていた。

バネのように自然と肘が伸ばされると、先にあるのはアキラの外腹斜筋だ。

「ち!」

アキラは回避しようとしたが、僕はチャンスを逃さない。

殴られても、腕を掴んで獲物を逃がさなかった。

一手遅く、反撃に移ろうとしたがすでに遅い。

伸びた拳の先にある外腹斜筋付近にも白い空気が存在していた。

勢いよく進む拳が外腹斜筋にダイレクトに当たる瞬間に意識する。

強い勢いによって、空気爆発の威力は変わるのかもしれない。

白い空気が爆発すると、アキラは僕の腕から離れて後方へ飛んでいく。
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