夜獣2-Paradise Lost-
飛んだアキラは地面に激突し、回転しながら転がっていく。

僕の右腕は地面へと叩きつけられ、更なる衝撃が走る。

「ク!」

全身が動かない。

空気爆弾を食らったアキラもしばらくは動けないだろう。

「くそ」

結果が良いとは言えない。

乗り越えたといっていいかもわからない。

僕はまだ、0から1に進んでいないのかもしれない。

「はあ、はあ」

体が痛む。

放置すれば、傷は悪化していくだろう。

背中を見せて倒れているアキラは、巻き添えを食らったようなものだ。

内臓のダメージは危険な状態になっているだろう。

渚から持たされた携帯電話をポケットから取り出す。

あれだけ攻撃を与えられたのにも関わらず、携帯電話はかすり傷のようだ。

震える左指でボタンを操作し、渚の番号が液晶に表示される。

コールの音が何回かした後、渚の声が聞こえてくる。

「どうしました?」

「病院には行けない怪我を負った。迎えに来てくれ」

「場所を説明してください」

あわてた様子がなく、渚は冷静な対処を取る。

謎な部分は多いが、協力者としては良い点を与えても良い。

説明を一通り終える。

「すぐに迎えに行きます。それまで動かないでください」

「動けないさ」

余計な言葉を話す気はなく電話を切る。

後は渚が向えに来るのを待つだけだった。

しかし、疲労と傷の痛みがピークに達していたせいで、意識が朦朧とし始める。

準備はしたから、意識を閉じても問題はない。

力不足だと嘆きながらも、闇の中へと落ちていった。
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