夜獣2-Paradise Lost-
参:「知った事じゃない」
目を覚せば、自分の部屋のベッドの上だった。

正確には、渚の家の一部屋を、僕の部屋に割り当てたというところだ。

窓から見える外界は、太陽の明かりに晒されている。

昨日から一日が経っている。

渚は僕が寝ている間に運んだのだろう。

アキラだけを放置することはない。

きっと、家のどこかの部屋にいるか、すでに帰っているかだ。

「まだ足りない」

アキラは強かったが、相打ちでは乾に程遠い。

能力だけで僕を追い込んだ。

閃きや努力が足りないと言う事実が突きつけられている。

「能力の使い方がいけないのか、肉体が鍛えたりないのか」

苦悩に苛まれながら僕は開いた拳を足に叩きつける。

足には叩いた痛みしかあらず、石をぶつけられた痛みがない。

立ち上がっても痛みはなく両足で歩ける。

その時、渚が扉を開けて入ってくる。

「よく眠れましたか?」

「悪くはないが、渚がこれを治したのか?」

傷のことがどうしても気になった。

「地道に手当てをする事なら出来ますが、人を治癒する能力はないです。ですが、家には治癒を持った能力者がいます」

次の闘いに何ヶ月もかかると思っていたが、運から見放されていないらしい。

「ありがとう」

「無事で何よりです」

消えない憎悪に支配されている以上は終わらない。

今、二ヶ月、三ヶ月も時間を無駄にはできないのだ。

僕は休むことなく、闘いの中で強くなっていかなければならない。

「お姉さんのこと、気にならないのですか?」

「協力者がお前だからこそ、不安はない」

完治に近い状態まで治癒されているのなら、アキラも無事だと思って良い。
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