夜獣2-Paradise Lost-
「ご気分はいかがですか?」

傍に寄ると、眼前に顔を見せて僕の顔色を伺う。

「どうでもいい」

「いつもよりは良いですね」

僕の言う事を無視して、診察を続ける。

「雪坂、僕に構う理由は何だ?」

無言になりながら、真剣な眼差しで体を見る。

雪坂は医師としても有能な技術を持っているのか。

常に雪坂が診察に来る。

「体も良好ですね。この分なら一緒に登校も出来ますよ」

「ふざけてるのか?」

「いえ、私は神崎さんのことが心配なんです」

「はっきりと答えてくれよ」

薬を飲んだというのに、少し興奮しただけでも体が痛む。

登校など程遠い状態だ。

「同族の放置は私の意に反します。だから、神崎さんに治療を施しました」

「僕は人殺しだ。生きていい人間じゃない」

一番大切だった人を殺してしまった。

あの時、禁忌に触れなければ助かっていたんだ。

後悔し始めると、夢に帰りたいと思う。

今いる場所はここじゃない。

甘美なる赤く染まった世界に旅立ちたい。

「駄目です。神崎さんは罪を清算することが仕事です」

肩を力強く掴まれると、眠ろうとしていた僕を現実へと戻す。
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