夜獣2-Paradise Lost-
「私は学校に行きます」

まだ、木の下に行っているのだろうか。

年月からすれば、僕よりも執念深い。

「そうか」

「ええ」

寂しそうな顔をしているものの、状況は何も変わらない。

「耕一さんの思いも尽きないことを祈ります」

決して、渚は殺人を促しているわけではない。

それは解っている。

「奴が消えない限り、僕の気持ちに終わりはない」

僕と渚の共通点は相手がどこにいるか解らない事だ。

探しようのない相手、再び会えるかどうかわからない相手。

だが、諦めてはいない。

お互いの胸の中には、方向は違えど大きな思いがあるのだ。

決して、色あせなる事のない、苦痛に満ちた思いだ。

僕も渚の事に関しては、止めろなどとは言わない。

何の確証もないし、応援もしない。

「私は先に出ますね」

渚は静かに部屋から出て行った。

とても細く、儚く、壊れそうな背中だった。

「感傷を抱く必要はない」

思いは復讐に注ぎ込み、本能を突き動かす。

本能は野生を生み出し、野生こそ強さの秘訣だ。

野生の心無くして、相手を射止める力は沸いてこない。

そう、心臓を射止め、息の根を止めなければならない。

絶対に闇に落としてやる。
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