夜獣2-Paradise Lost-
外界は暖かく、シャツとジャージ、ジーパンだけで十分だった。

天からは太陽が慈悲を与えるかの如く、明るく照らしている。

それは、疎ましく眩しい。

闇の中の僕は光と混じり合う事無く、道を歩き続けている。

光を求めたところで、何も解決しない。

毒には毒を、闇には闇を。

乾の闇を打ち破るには、闇に染まるしかないのかもしれない。

渚の家からしばらく歩き続け、学校付近に来ていた。

渚は学校の中にいるんだろう。

だが、渚に会うために学校に行く必要がないので通り過ぎる。

更に歩くと、デパートや本屋などの街並みが見えてくる。

自然と人の数が増え、楽しそうな顔をしている。

僕だけが悩みを抱えているわけではない。

しかし、街に存在する人間の殆どが光を受け入れられる側にいる。

「僕は、もう遅い」

鮮やかな色を失い、元に戻れない位置まで来ている。

他人の目には輝いて見える世界も、僕からすれば闇しかない世界だ。

だが、世界は僕を受け入れている。

光を心に秘めている人間だけが優遇されているわけではない。

どんな人間も死は平等の世界だ。

世界は気まぐれで圧倒的な力を持っており、抗う手段など存在しない。

明日にでも誰かを抹殺するだろう。

だが、乾を討つまでは、世界に待って欲しいと願う。

乾は殺さなければならない。

誰かが実験台に使われるとか関係なく、私利私欲に塗れた行動でしかない。

世界が僕の行動をいつ拒むかも解らない。

ふとした事で肉体を滅ぼされたとして、怨念だけでは乾を殺せない。

その時に、僕は諦める事が出来るのだろうか。

目線を上げると自分の家の前へと辿り着いていた。
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