夜獣2-Paradise Lost-
気付けば街中。

夕日が顔を隠し、闇の時間を招いている。

軒並み続く店に興味はなく、足を進める。

歩いている事に目的があるとはいえない。

街を歩いていたとしても、乾に会えるとは思っていないからだ。

「どうすれば会うことが出来る」

焦燥が募り、行き場のない憎悪は脳を侵食する。

渚に期待できない。

今も発見出来ていない状況だからだ。

だからこそ、肉体を極限まで鍛え、色んな状況を想定し敵と戦い、時間を費やすしかない。

成長の手段は選ばない。

卑怯と罵られても、愚かと囁かれても、成長できるならば問題ない。

殺気を向ける相手がいれば、遠慮なく闘うだけだ。

最終的に乾にたどり着くことが出来ればいい。

例え、僕の精神が壊れようとも、肉体があるならば機会は来る。

必ず報復を行わなければならない。

他人の意見を挟む余地はない。

意見を聞けば好転するわけでもないし、強くもならない。

それに、実行するのは僕で、決して他の誰にも渡す気がない。

そこには世界という偶然も含まれている。

夢中で考え事に浸っていたが、木々の音が耳に囁いたので顔を上げる。

「公園か」

目の前に懐かしき光景が広がっていた。
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