夜獣2-Paradise Lost-
何度、苦渋を飲まされただろう。

子供の遊ぶ場所なのに不良は遠慮する事無く、何度も屯していた。

良い思い出は一つも無い。

公園に来るたび、僕は土の臭いを嗅がされた。

誰かが来ても、何も出来ずに情けなく転んでいた。

今は、変わったのだろうか。

敵を砕く拳は存在する。

だが、不良を相手に実践した事がない。

もし公園の中に不良が居て、何かをやらかしているのなら相手になろう。

多分、一人ではないので、成長も早まることだろう。

公園の中に人影がない。

立ち呆けても無意味だ。

立ち去ろうとした時、ほんの微かに人の声がした。

「いつまでも変わらないか」

風なら身体で感じられる。

だが、音だけが耳に伝わってきた。

勘に近いが、自分の耳を信じてみるのもいいだろう。

不良が居る時は、いつも何かが起こっている。

今宵も誰かを貪っているのかもしれない。

だとすれば、僕にとって好都合である。

人質がいる状況なら、一つのパターンとして試すことが出来る。

公園の中を歩いていき、人気の無い場所を凝視する。

闇の中で不自然な動きをしている草むらが見えた。

隠れる広さはそこそこで、人数は4,5人ぐらいか。

「悪いが、稽古に付き合ってもらう」

胸の奥の傷跡が疼き、怨嗟を呼び覚まし獣が目覚める。
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