夜獣2-Paradise Lost-
残心の型を取り隙を作らなず、しばらくは辺りに気を配る。

しかし、仲間が出てくる気配はなく、不良四人も起き上がってくる様子はない。

「ふう」

息を吐いて、構えを解いた。

状況を把握するために桜子の傍に寄って様子を伺う。

服は破られているが、体に痣や性的行為を受けた痕跡はない。

始める寸前だったみたいだ。

「まだ、この街にいたのか」

家がないので、一人暮らしか学校の寮で暮らしているのか。

よく見れば、僕の通っていた高校の制服を着ている。

本来ならば遠ざかろうとするものだが、敢えて街に留まったか。

「僕には、関係のない話だ」

桜子には桜子の生活がある。

ただし、今は放置する事が出来ない。

夜の公園に肌を露出した女性を寝かしておくのは気が引ける。

渚に電話をかけ、コール音がニ、三回した後で渚の平坦な声が聞こえてくる。

『はい』

「公園まで来て欲しい」

『何か起こったんですか?』

「これば解る」

一方的に通話を切り、後は渚を待つだけだ。

地面に寝かしておくのも汚いので、桜子を抱え上げて公園のベンチに横たわらせる。

風邪を引かれても困るので、上からジャージをかける。

出来れば、起きてないで欲しい。

会話をする気にもなれないし、何を言われるかも予想はつく。

説明をしたところで理解は出来ないし、真相に近づいたところで不幸になるだけだ。

僕の目的は、関係のない誰かを巻き込むことじゃない。

「ん、んん」

気付いたのか、口から吐息を漏らして半眼で僕の顔を見る。

「こう、いち?」

何も伝えず、僕は背中を向けた。
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