夜獣2-Paradise Lost-
「普通の人間だったら、軽く避けようとしただろう」

両腕を振り、構えなおす。

「何があったのかは知らないが、彼のことを恨んでいるらしいな」

「乾と知り合いか」

ならば、話を無理矢理にでも引き出すしかない。

「俺が彼に不利益になることを口走ると思うか?」

僕の様子から読み取ったのか、先手を打たれる。

だが、タダで聞く気はない。

「話してもらう。お前を叩きのめしてからな」

「不真面目なお前が出来ると思っているのか?」

「僕は仕事をこなすだけだ」

「驕り高ぶるなど、小者にしか出来んよ」

相手の挑発に激昂はしない。

手がかりのある相手に喜びを感じているのだ。

「ハハ、いい具合に事が進んでいる」

嬉しさのあまり、狂喜しながら襲い掛かる。

間合いまで来ると、真後ろの白い空気に肘をぶつける。

肘の部分から透明な火が吹き、数倍の速さで腕が伸び拳が前へ飛んでいく。

「倒れろ!」

「恐れる要素などない!」

軌道を読んでいたのか、右にサイドステップをして軽く交わす。

大技だけに次の行動に移るまでに隙が出来る。

「お前は洗礼を受けなければならない男だ!」

真っ直ぐに伸ばされた腕に海江田の拳が突き刺さる。

「ぐ!が!」

拳から放たれた痛みが何かおかしい。

殴られた側と逆方向からの両サイドに痛みが走っている。

「ちい!」

距離を置こうとしたが、海江田はまとわり付くように間合いに入る。
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