夜獣2-Paradise Lost-
「ふ!」

海江田の拳はボディーを狙っている。

「潰えろ!」

先ほどの違和感は気になるが、避けられない位置まで迫っており腕でガードする。

「グア!」

防御が無意味なのか、またも背中に痛みが走る。

油断はしてないが、海江田の術中にはまったらしい。

固めていたガードが解け、隙だらけの状態に持ち込まれる。

海江田が隙を見逃す事無く、畳み掛けるように拳や蹴りの連打で猛襲する。

僕は前方を防げず、背後の痛みの策もなく、一方的な制裁を受けた。

顔面、胸、腹、アバラ、背骨などに痛みが響き渡る。

今の状態をたち直すために、腕を振るう。

しかし、攻撃を見切られており、懐に屈みこまれる。

不味いと気づいた時には天に昇る龍のように、拳が僕の顔に急接近する。

この大きな一撃を食らえば、再起不能になる。

だが、諦めるわけにはいかない。

攻撃は当てなければ意味がない以上、海江田よりも最短距離で当てにかかるしかない。

腕が動かせないのであれば、足を動かす。

海江田が間合いにいるという事は足のつま先も近くにあるという事だ。

お互いの周りには白い空気が纏わりつくように存在している。

地面の上で足を滑らせ、つま先が当たる直前に爆発し、お互いの後方へと足が引っ張られる。

「何!」

両者が前のめりになると僕の胸と海江田の頭がぶつかり合う。

海江田が反動でのけぞるように数歩後ろへ下がる。
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