夜獣2-Paradise Lost-
「恋人か」

「そう、なりますかね」

言葉を詰まらせるようだが、何かあるのか。

興味がないといったら、嘘になる。

話の中の男も、何か特別な状況に陥ったのだろうか。

「彼は幾多もの銃弾の中を駆け抜けながら闘いました」

「そうか」

男を思いながらも、僕に協力する理由はなんだ。

僕に何を期待しているのか。

「そいつも能力者か?」

「ええ」

「お前の待つ奴っていうのもそいつか?」

「ええ」

「そうか」

説明役の渚の口数がいつもより少ない。

「まあ、いい。今の僕には関係のない話だ」

渚に額縁を返し、背を向けて部屋から出て行こうとする。

「少し、お待ち下さい」

「まだ、説明し足りない事でもあるのか?」

「いえ、相場さん、お願いします」

「渚、彼を甘やかしすぎではないか?」

「いいんです」

「解った。渚に従う」

「ご迷惑をかけます」

相場は、僕の傍へと近づいてくる。

殺気は感じられない。

僕の前に立つと、両手を胸の部分に添える。

紅眼へと変化させ、無言で胸の部分を見つめていた。

すると、温かみのあるオレンジ色のような光が両手に宿り始める。

温かさが体内に伝わってくる。

そして、僕の体の痛みは見る見る内になくなっていく。
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