夜獣2-Paradise Lost-
横っ腹に入っている足を掴み、白の領域まで押し進む。

「ちい!」

海江田が声を上げた時には白の領域の中だ。

「シャア!」

紅眼の能力を最大限に活かす拳を鳩尾へと放つ。

だが、海江田は体を捻り回避する。

「ぐう!」

拳は胴着だけに当たり、空気爆弾は胴着に着弾すると海江田は引っ張られるように横回転しながら後方に吹っ飛んだ。

勢いがあったせいか受身を取る事が出来ずに地面に激突し、回転していく。

「はあ、はあ、くそ」

今、立っている場所は白の領域。

海江田が飛んだ場所に白の領域はない。

このまま、深追いをして何もない拳を打ち込むか、海江田を来るのを待つか。

考える時間が惜しい。

海江田は白の領域がなくとも能力を発揮出来るのだ。

今の僕には、普通の拳や蹴りでは海江田に勝つ方法はない。

「待て」

近距離戦闘だけが空気爆弾の使い方だと、誰が決めたのか。

僕が考えている間に、海江田は立ち上がり構えを取った。

「お前が今まで力を使わなかった。いや、使えなかったという事は、そこだけがお前にとっての聖域か」

海江田だって人間だ。

ダメージがないとはいえない。

だが、確実に僕の足のほうが受けた傷は大きい。

「お前は能力と不意打ちがなければ勝ち目はない。無論、今の俺も能力がなければお前に勝てないかもしれない。だが、それはお前が能力あっての話だがな」

海江田は近づいてくる。

「お前を待って倒すなどという事はしない。正面からねじ伏せる」

明らかに余裕を見せている。

空気爆弾に当たらなければ勝てると思っている。

「僕は奴に会う。それだけだ」

海江田と僕との距離はまだ開いている。

ならば、間に合う。
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