夜獣2-Paradise Lost-
軋む廊下を歩き、誰とも会わずに家から出る。

外界は太陽が全てを焼き尽くすように明るい。

闇は闇、簡単に照らされるほど浅くない。

だが、夕子の眩しい顔を思い出してしまう。

思い出したところで夢の中の夕子は帰ってこない。

「別の場所に行きたい」

辺りは畑が並んでおり、舗装された道路には人通りも少ない。

雪坂の家は3年前と変わらぬ場所に在る。

3年という月日では何も変わらない。

僕の心の中も変わらない。

行くあてもなく、目の前の道を適当に歩く。

歩く道は忌まわしき場所に続いている。

だが、夕子との思い出の場所。

色んな夕子の顔を思い出せる。

夕子の家、自分の家、学校。

自分の家はすでにないかもしれない。

親はどこへ行ったのか知らないし、姉の行方も知らない。

僕は取り残されたんだろう。

何故か、重い足は学校へと向かっていた。
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